
人財育成
考え方・方針
最適な人財ポートフォリオの構築に向けた人財育成
長期ビジョンで掲げる「イノベーションリーダー」に向けて、最適なポートフォリオに必要な人財を量・質ともに充足する方策として、採用による外部人財の獲得に加えて、育成・リスキリングを通じた社内人財強化による内部調達も重視しており、教育・研修制度の改革を進めています。長期ビジョンの実現に向けて、人財ポートフォリオの重点強化項目を「DX」、「女性」、「グローバル」、「シニア」と設定し、関連する研修や教育機会の強化・充実を図っています。
取り組み
社員自らが主体的に学ぶ風土づくり
2024年には管理職、2025年には一般職に新人事制度を導入し、従来以上に前向きな挑戦や意欲的な成長を後押しする環境にシフトしてきました。
そうした状況下、すべての従業員が自身の職務や志向・適性を踏まえて自律的に学習できる教育体系を整備しています。
公募型研修やオンデマンド型の学習サービスを積極的に取り入れ、自らが課題とするスキルを選択形式で学習できるようメニューの充実を図るほか、年次別のキャリア教育や1on1等のコミュニケーション施策により自らが自身のキャリアのために学習する動機づけを図り、自律的な学びの風土を醸成しています。
近年では、社員が自身のニーズに合わせて最先端の知識・スキルを習得できるオンライン動画学習サービスを導入し、自律的な学習機会の拡充を行っています。
教育体系図(抜粋)(2024年7月現在)

2024年度人事部主催研修(2024年1月~12月)(単位:受講者数(人)/研修対象者受講率(%))
新入社員研修 | 97/100 | 動画学習サービス | 350/100 | |
---|---|---|---|---|
初級問題解決研修 | 59/100 | 海外派遣研修 | 23/100 | |
上級問題解決研修 | 37/100 | 語学留学(海外トレーニー) | 4/100 | |
新任管理職研修 | 18/100 | 英語ライティング研修 | 2/100 | |
新任部長職研修 | 11/100 | 英語プレゼンテーション研修 | 1/100 | |
中途採用者研修 | 48/100 | 国際ミーティングスキル研修 | 5/100 | |
ビジネス研修 | 45/100 | 新任OJT研修 | 81/100 | |
2年目レポート発表(本社採用者) | 36/100 | ネクストキャリア研修(50歳社員対象) | 81/100 | |
入社5年目キャリア研修(入社5年目社員対象) | 67/100 | Excel関連研修 | 7/100 | |
マネジメント基礎研修 | 20/100 | DX研修 | 217/100 | |
国内外ビジネススクール派遣 | 3/100 | セカンドライフセミナー | 47/100 | |
マネジメント・アドバンス・プログラム | 11/100 | 女性特化研修 | 13/100 |
年間研修受講実績(人事部主催・共催研修)
延べ受講時間 | 一人あたり受講時間 | |
---|---|---|
単体 | 67,068時間 | 27.0時間 |
連結 | 134,101時間 | 16.3時間 |
キャリア支援
社員のキャリア開発支援のため、入社5年目の社員、およびシニア層手前の社員を対象にキャリア開発研修を行っています。さらに2022年にはキャリア相談窓口を社内外に設置し、新入社員からシニア層にいたるまで仕事におけるキャリア構築支援や、ライフプランに合わせて女性や外国籍社員特有の悩み事にも対応するなど幅広く個々の相談を受け付けています。キャリア相談窓口は、社内外ともに国家試験のキャリアコンサルタント有資格者が対応し、窓口を設置して以来、累計45件の相談案件に対応してきました。
また、2018年より、手挙げの異動施策として社内公募制度を導入しました。2023年には、同制度に社内・社外副業制度、社内留学制度を加えた「ジョブチャレンジ制度」を制定し、人財流動化施策を運用しています。社内副業制度および社内留学制度は新制度になるため、活性化に向けた取り組みを進めています。2022年に導入した社外副業制度は法的制約のもと、適用範囲を限定しながら運用をしていますが、社内では経験できない内容や、日常業務に繋がるスキル習得・研鑽を伴う内容など、ユニークな事例が出てきています。
「ジョブチャレンジ制度」の概要
制度 | ジョブチャレンジ制度 | |||
---|---|---|---|---|
社内公募 | 社内留学 | 社内副業 | 社外副業 | |
概要 | 社員が社内求人情報に応募し、選考プロセスを経て、希望する部門へ異動できる制度。原則として、キャリア採用の求人ポジションと同一。 | 社員が社内求人情報に応募し、選考プロセスを経て、一時的に所属部門を離れ、希望する部門へ異動できる制度。留学期間満了後、所属部門へ留学で得たスキル・知見等を持ち帰ることが前提。 | 社員が社内求人情報に応募し、選考プロセスを経て、希望する部門の業務に所定内の一部労働時間を使って従事できる制度。 | 社員が所定労働時間外で、社外の業務に従事できる制度。雇用契約を伴わない個人事業主・業務委託契約での副業のみを認めている。 |
今後も、「ジョブチャレンジ制度」の運用・活性化を通じて、社員が自らチャレンジし、新たなスキルや知見を獲得し、活躍の幅を広げる機会を提供するとともに、組織活性化ひいてはイノベーション創出に繋がる人財流動化を促進します。
「ジョブチャレンジ制度」の目指す方向性
社内公募実績(単位:人)
2021年度 | 2022年度 | 2023年度 | 2024年度 | |
---|---|---|---|---|
募集件数 | 40 | 69 | 76 | 7 |
応募者 | 13 | 11 | 20 | 13 |
合格者 | 7 | 0 | 4 | 4 |
DX人財の育成
各事業においてイノベーションを実現する上で、DXによる新たなビジネスモデルの創出や、業務プロセス効率化を推進するDX人財の確保が急務となっています。
当社では、種々のDX関連研修により全社のITリテラシー底上げを図るとともに、オンデマンド学習機会の充実やDX関連部門への社内留学によるOJT教育を通じて、DX人財の早期育成を図っています。
DX人財の中でも、社内の各部門においてDX推進を実現できるスキル・マインドを兼ね備えた人財を「DXプランナー」として認定し、評価・登用に活用する取り組みもスタートしており、継続的なDX学習機会の提供を通じて、DXプランナーの拡充を図っていきます。
DX関連研修
当社は、アセスメントで各自のDXレベルを測定し、レベルに応じた体系的な教育を実施しています。
DX関連研修として、基本的なDXの概念や基礎知識習得を行う「DX基礎研修」に加え、「データ分析」「生成AI」など受講者の所属事業におけるDX活用テーマに沿った研修を開催し、実務におけるDX推進支援を行っています。2024年までに575名がDX関連研修を受講し、うち101名がDXプランナーとして認定を受けています。
女性活躍の推進
多様な人財が最大限活躍できる組織の実現に向けた重要課題として、女性活躍の推進に取り組んでいます。従来の平等・均質的な取り組みから公平性をより志向した組織カルチャーの構築、および均等な成長機会の提供が不可欠だと考えています。
当社は、2027年度の女性管理職比率4.1%を目指し、仕事と家庭生活の両立を支援するための種々の制度・施策に加えて、特化型の研修や座談会の開催などによる教育や交流の機会を通じて、女性社員を取り巻く組織、風土改革に取り組んでいます。
2024年度には、管理職を目指す女性社員を対象に、先輩女性管理職を交えた意見交換を行う女性活躍推進交流会を実施し、参加者のキャリア形成に対する意識向上と社内ネットワーキング促進を図りました。すべての社員が自分らしいキャリアを描けるよう、今後も女性社員一人ひとりに寄り添い、成長を促す積極的な支援を行っていきます。
グローバル人財の育成
当社の成長に欠かせないグローバルな事業展開をリードする人財を排出するために、幅広い階層に対応した教育体系を整備しています。キャリア早期から自身のキャリアに「グローバル」を位置づけ、成長意欲や挑戦への姿勢を持ってもらうため、特に若年~中堅層への教育を充実させています。
社内TOEICやオンライン英会話などの語学力向上支援に加え、海外NGOとの協働プログラムにより異文化対応力や主体性を培う若手社員向けの海外派遣研修、実践的な海外業務体験により海外ビジネスシーンでの適応力を身につける中堅層向けの海外トレーニー研修を実施しています。
海外派遣研修
海外NGOとの協同プロジェクトに参加
海外NGOとの協同作業を通じて、グローバルな視点の獲得や異文化のなかでもミッションを達成できる・意思決定できる人財への育成を目指しています。また、新たな知見との融合によるイノベーションを体験することも狙いとしています。
研修では、フィリピンのNGOで実際に発生している課題に対し、当社社員がそれぞれプロジェクトメンバーとして関わり、多国籍チームで様々な手法で解決策を考え、実行または提案するという内容を実施しています。
異文化対応力を身につけるだけでなく、NGOを通じた社会貢献活動を通して、多国籍の仲間の中で自律的、主体的、能動的に行動する力をつけると同時に、世界、社会への広い視野も育てています。
受講生の声
2024年6月、フィリピン(セブ)にて4週間の海外派遣研修に参加しました。教育支援を行うNGO団体でインターンを行い、支援対象の学生が抱える課題の把握と課題解決を目指してワークショップを企画・実施しました。
私が研修で学んだ重要な点は、物事に取り組む際に自分の想いを持つ大切さです。今回のワークショップではアイデア、テーマ検討の際に学生たちが課題を自己解決できる手助けにしてもらうため、楽しみながら問題の原因追求と解決の説明がしやすい紙飛行機をテーマにしたいという想いがありました。相手、今回で言うと学生に対して、満足してもらえるような自分のアイデアが盛り込まれるとモチベーションが保てる上に、良いものを作りたいという貢献の気持ちが芽生え、プロジェクトでのやりがいにも繋がりました。
帰国後は、業務において既存のやり方に捉われず、自身のアイデアを盛り込むことで取引先及び自分自身も満足できるように業務に取り組みたいです。
鉄道カンパニー 調達部
塚本 瞭太
シニア人財の活躍推進
人的資本の最適化に向けて、すべての社員が活躍し続ける組織を目指す上で、当社の年齢分布におけるボリューム層であるシニア人財(50歳以上の社員)に対し、年齢にかかわらず一人ひとりの活躍を最大限引き出す環境づくりに注力しています。
2021年より、シニア人財を対象に「ネクストキャリア研修」を実施し、知識・スキルの硬直化を防ぎ、豊富な経験を活かしつつ、新たな業務に取り組むためのリスキリングの啓蒙、機会提供を行っています。
また、定年退職を迎える社員に対し、公的年金制度や医療・介護・投資の注意点を学べる「セカンドライフセミナー」を実施しています。定年後の生活を見据えた準備のサポートを通じて、安心して現在の業務に取り組める職場づくりを志しています。
オンボーディング
新卒採用、中途採用を問わず、新たにナブテスコに迎え入れる社員に対して、ナブテスコの文化や業務へ速やかに適応し、当社でいきいきとしたキャリアを形成するためのオンボーディング支援にも力を入れています。
社員としての基礎教育のみならず、配属後のフォローや人間関係の構築支援、役割理解の促進などを通じて当社で働く上でのエンゲージメントを高め、人財の定着と活躍に繋げています。
若手社員の基礎力醸成・向上
新卒採用者のオンボーディングでは、入社3年間を基礎能力の醸成・向上期間と位置付けて、社員の成長段階を考慮した研修プログラムを職種毎に設計しています。
また、早期戦力化に向けては職場での実務経験が非常に重要であると考え、OJT制度を導入しています。新入社員一人ひとりにOJT担当者をつけて、きめ細やかな指導ができる体制を整えるとともに、OJT担当者への研修を行い、質の高い育成環境を備えています。

2年目レポート発表会
多文化共生プログラム
2023年度から新たに、日本以外の国を母国とする外国籍新入社員とそのOJT担当者を対象とした研修を実施しています。本研修は、若手社員のオンボーディングとしての取り組みであるのと同時に、DE&I(ダイバーシティ・エクイティ&インクルージョン)の取り組みの一つでもあります。
日本固有のビジネス文化はもちろん、各国のコミュニケーションスタイルの違いなどを学ぶことで、外国籍新入社員が組織により早く馴染み、能力を最大限発揮できることが若手社員の早期戦力化に繋がると考えています。また、外国籍新入社員だけでなく、そのOJT担当者にとっても重要な研修となっています。共に学ぶことで、ミスコミュニケーションの原因を理解することができるため、根本的な解決に繋がります。さらに、OJT担当者の育成にも繋がっています。
過去2年間で累計22名が受講しており、今後も増加する予定です。

外国籍新入社員とOJT担当者でディスカッションする様子
経営幹部候補人財の育成
ナブテスコグループでは、将来の幹部候補としての育成、合理的な組織運営に資するスキルの強化、自己理解を目的として選抜型の経営人財育成研修(Management Advanced Program(MAP))を実施しています。MAPの受講により、経営者視点でのリーダーシップスキルの向上を図ります。経営戦略に関する知識を学び、テクノベート戦略を習得することで新たなアイデアやビジネスモデルを生み出し、組織の競争力を高めることが期待できます。
また、この研修では、他社の管理職との交流があり、経験やアイデアを共有し、新たな人脈を構築することができます。2021年開始以降、合計42名が受講済みです。
海外グループ企業の人財育成
当社グループでは、海外グループ企業の人財育成に積極的に取り組んでいます。現地人財を積極的に採用し、各地域で採用する社員の技能等の向上を目的に様々な教育を実践しています。中国では、各拠点の幹部候補者向けにビジネスマネジメント研修を実施し現地スタッフのマネジメント登用を促進しており、海外グループ企業では現地人財の中から社長を登用しています。この他、鉄道車両用機器事業、油圧機器事業、商用車用機器事業、自動ドア事業など幅広い事業において、日本国内の工場に海外グループ企業の人財を一定期間派遣し、OJT方式で技能向上を図る研修プログラムを実践しています。
ナブテスコ ウェイに基づく当社グループの企業文化を理解してもらうとともに、専門技術を学ぶ機会を提供することで、出身国の経済発展に寄与する人財育成を図っています。今後も、こうした取り組みを通じて、海外でのオペレーション基盤の強化を図るとともに、操業地域の経済・社会の発展に貢献してまいります。
人財育成・役割発揮に繋げる人事評価制度
当社の人事評価制度は、賞与・昇格・昇給といった各処遇へ反映にとどまらず、社員一人ひとりの人財育成や役割発揮を促進するための重要な仕組みです。管理職および一般職においては、設定した目標に対する達成度と、成果創出に向けた具体的な行動を評価し、評価結果を上司と部下の間での対話や振り返りの場を通じて共有、被評価者の自己理解や課題認識を深めるとことで人財育成に繋げています。
当社は、2024年に管理職人事制度を改定し、ジョブ型人財マネジメント要素を反映した制度に刷新しました。続けて2025年には一般職人事制度を従来の職能型人事制度から、役割や責任に基づく役割基点の制度へと移行させ、社員一人ひとりの役割や期待される成果に焦点を当てた評価体系を導入しました。これらの改定により管理職と一般職の人事制度はジョブ・役割を基点とした制度に統一され、評価制度は管理職から一般職まで一気通貫した仕組みとして運用しています。
人事評価は、ジョブ・ディスクリプションや各等級の期待役割を定義した役割等級定義に基づく役割基点の目標設定・評価を行う「MBO評価」と成果創出に向けた具体的な行動を評価する「行動評価」で構成されます。まず「MBO評価」では、組織目標と個人目標を連動させることで、組織目標の達成に向けた従業員一人一人のコミットメントを促し、組織全体の目標達成に向けた意識を高めています。次に「行動評価」では、管理職と一般職の両方において期待される行動や役割に基づいた「期待行動」を設定しています。管理職においては長期ビジョンと関連の深い「変革実現」「リーダーシップの発揮」や、組織内のコンプライアンスに関する啓発や情報発信について規定した「コンプライアンス」などの計7項目について、一般職においても、管理職の評価項目とのつながりを踏まえた5つの項目の「期待行動」に対する行動の実践度を評価し、ポジションに期待する行動の実践度・ギャップを明らかにし、上位ポジションへの就任に向けた育成ガイドとして活用しています。
また、これらの人事評価の枠組みが適切に運用されるよう目標設定内容をレビューする目標設定会議と評価結果をレビューする評価調整会議を組織・レイヤー毎に開催する等、人事制度運用の定着・浸透に向けて各種施策を実行しています。
加えて、2024年4月より部下と上司の定期的な対話の機会創出を目的として1 on 1ミーティングの運用を全社で展開しています。業務に関わるテーマに限らず部下自身の成長やキャリアアップ等、部下の成長や気づきに繋がる部下主体の対話の機会を設けることで、目標達成や成長促進に向けた日常的なフォローアップを促す仕掛けにするとともに、適正な人事評価の基盤となる上司・部下間の信頼関係の向上に取り組んでいます。
更には、部長以上の役職者を対象に、行動に対する自己認識と他者認識のギャップを測定する360度評価を毎年実施しています。この結果は本人へフィードバックされ、内省を促すとともに、必要に応じ会社主催の育成力強化研修を開催しています。これらの取り組みを通じて、管理職層のマネジメント力を向上させ、組織パフォーマンスを最大化させることを目指しています。
自発的な学びの支援
自律的に学べる風土の醸成に伴い、同じ学習テーマをもった従業員によるコミュニティ活動も活発化しています。2024年度には、BIツールやデータ分析に関する学習や情報交換を目的とした従業員グループが発足しました。100名を超える従業員が参加し、会社主催の勉強会やツール体験会や有志での事例研究会を通じて切磋琢磨しています。