人的資本の最適化

人的資本の最適化による企業価値向上ストーリー

ナブテスコは、長期ビジョンで掲げる「イノベーションリーダー」に向けて、統合前から積み重ねてきた顧客ニーズに「応える」取り組みとともに、お客さまや社会の「期待を超える」視点を重視し、業績の向上(Financial Impact)と社会課題の解決 (Social Impact) を同時に実現していくことで企業価値を高めることを追求しています。

その実現には、「両利きの経営」で言われる既存事業の深化と新規事業の探索の両立が必要であり、イノベーションを促進する基盤となる諸資本の変革が求められます。なかでも人的資本は価値創造プロセスの起点となる重要な資本であり、ナブテスコでは、「イノベーションリーダー」の実現に向けた人的資本の最適化を図ることを、人的資本経営の目的としています。

お客さまの「期待に応える」ためには、既存事業における絶え間ない技術革新や性能・品質の改善、生産性の向上等を通じて、顧客ニーズに徹底的に寄り添う人財が必要となります。一方、お客さまや社会の「期待を超える」ためには、既存事業領域の拡大や新事業の創出など、お客さまや社会の期待を超える価値を生み出し、提案する人財の拡充や育成が求められます。

組織面では、経営環境の変化に対して柔軟に対応できる組織能力の獲得が重要となります。そのためには、経営層からの上意下達による従来型のマネジメントだけではなく、各個人が自律的・自発的に行動することやトップダウンとボトムアップをつなげる管理職層の役割が重要となります。ナブテスコの人的資本経営は、これら各層の三位一体による推進が骨格となっています。各層がこのような役割を果たせるよう人的資本への投資を積極的に行い、「期待に応える」と「期待を超える」サイクルを力強く回し続けることで長期ビジョンの実現につなげていきます。

長期ビジョン

人的資本経営の目指す姿

ナブテスコでは、会社・経営層、組織・管理職層、個人による役割遂行が価値創造につながるとの認識のもと、人的資本の最適化に向け、「会社・経営層」「組織・管理職層」「個人」のそれぞれでの目指す姿を設定しています。会社・経営層においては、Actionできる「状況・環境」を創り出すこと。「組織・管理職層」においては、個々人のActionの種に気づきを与えること。「個人」においては「Innovation in Action」の種を芽吹かせること。これらが、ナブテスコの人的資本経営の目指す姿です。

人的資本経営の目指す姿

現状と目指す姿のギャップ/課題抽出

ナブテスコでは、社員の主観的な状態を測定するエンゲージメントスコア(ES)と組織診断を定期的に実施し、個人の状態と組織風土の両面から現状把握と課題抽出を行っています。

組織診断の設問設計にあたっては、挑戦、共創、学習、創意工夫などイノベーション促進に関連性が高いと考えられる項目(イノベーション項目)を設定しました。以下のグラフは、ESと組織診断の設問群を「個人の状態を表すもの(個人指標)」、「組織の状態を表すもの(組織指標)」に分類した上で、イノベーション項目とそれ以外の設問項目の充足度の相関分析を両指標について実施し、イノベーションとのつながりの強さ(横軸)、充足度(縦軸)でプロットしたものです。

両グラフの右下の項目群は、「イノベーションとのつながり」が強い一方で「充足度」が低い項目であり、組織指標においては、会社・経営層のレベルでは「目標達成の見通しの実感」、「会社による世の中の変化先取り」「挑戦する風土の醸成」、組織・管理職層のレベルでは、「部署を超えた問題解決」や、「次のリーダー育成」がイノベーション推進のドライバーとなることが示唆されます。

個人指標では、仕事へのやりがいや達成感を得られ、成長につながる実感を持つことがキーワードとして挙がっています。これらの項目の充足が、イノベーションリーダーの実現に向けた重点課題となるとの仮説を構築し、ギャップ解消に向けた各施策を、「会社・経営層」「組織・管理職層」「個人」が三位一体となり推進しています。

個人指標とイノベーション

個人指標とイノベーション

組織指標とイノベーション

組織指標とイノベーション

人的資本KPI

ナブテスコでは、人的資本経営の推進状況や取り組みの成果を把握するため、組織診断とエンゲージメントサーベイを組み合わせた合成系指標「イノベーション指数」「リンケージ指数」「エンゲージメント指数」を人的資本KPIとして設定しています。各KPIの構成要素から重点課題を抽出し、具体的な施策と連動させることで、社員一人ひとりの成長やチームの協働力を高め、組織全体のパフォーマンス向上を継続的に推進しています。

人的資本KPIの推移

【会社・経営層】イノベーション指数

グラフ

【組織・管理職層】リンケージ指数

グラフ

【個人】エンゲージメント指数

グラフ

2024年度は、すべての人的資本KPIにおいて、前年比で1ポイントずつ改善しました。
「イノベーション指数」は、個人の「挑戦」や専門性向上に向けた「学習」に関する設問でポジティブな回答が増加した結果、前年比1ポイントの上昇となりました。「リンケージ指数」は、重点課題項目である「今期業績の達成見通し」や「部門を超えた問題解決」の向上が寄与し、前年比1ポイント上昇しました。一方、eNPS(自分の職場で働くことを親しい人に勧めたいかどうかを示す指標)は低下しており、理念・戦略の浸透に向けた取組みは未だ十分とは言えません。今年より開始したトップマネジメントによるタウンホールミーティングや、ナブテスコウェイ浸透活動(ウェイ活)、社内報を通じた理念・戦略に関する情報発信などを軸に、会社・事業への誇りや信頼を高める取り組みを推進していく必要があると認識しています。また、「エンゲージメント指数」は、重点課題項目である「成長機会」「やりがい」「達成感」「成果に対する承認」のスコアが何れも伸長し、前年比1ポイント上昇しました。上司・部下間のコミュニケーションが活性化し、日常的なフィードバックや評価の仕組みがより適切に機能し始めており、社員一人ひとりが成長や成果を実感しやすい環境が着実に醸成されつつあると考えています。ただし、各項目の充足度は依然として十分な水準には至っておらず、引き続き各項目に対応する具体的な施策を検討・実行していくことが重要であると認識しています。

【会社・経営層】イノベーション指数

イノベーション指数向上に向けた体系的な施策展開

図

【組織・管理職層】リンケージ指数

リンケージ指数向上に向けた体系的な施策展開

図

【個人】エンゲージメント指数

エンゲージメント指数向上に向けた体系的な施策展開

図