水資源・生物多様性の保全

考え方

水利用に関する基本的な考え方

当社グループは、現在事業活動において大量の水や所定の水質を確保した水を必要とすることはありませんが、水資源の管理を環境保全上の重要課題と捉え、水利用量削減、適正な水質管理、水質汚濁物質の流出防止に取り組んでいます。

水利用量については、事業所毎に取水量、排水量を毎月計測し、環境情報管理ツールを使用してグループ全体の集計を実施しています。月間利用量の変動が大きい事業所については増加の原因を調査し、必要に応じて利用量削減の対策を実施します。また、水質管理については毎月の自主検査および外部業者による定期的な検査を実施し、継続的にモニタリングを行っています。

さらに、海外グループ会社を含めたグローバル水利用量の管理に取り組んでいます。海外グループ会社の水利用量は、当社グループ全体の約10%と少ないですが、グローバルな水リスクへの対応のため継続して管理を行います。

2025年度の国内・海外拠点における法令違反は0件でした。引き続き水利用に関する管理を継続して徹底します。

当社グループでは、水利用量削減に向けた外部イニシアチブとの協働として、2014年度よりCDP Water※に回答しています。

  • CDP Water:CDPが水リスクについて企業にリスク認識や対応戦略を問うプログラム。

取り組み

当社グループの事業活動における水の主な用途は、地下水を利用した試験装置の冷却と豪雪地域における融雪です。

水質管理
利用した地下水は厳しい自主管理基準に基づいて河川へ排水しています。
取水量削減
高効率空調設備を導入することで空調機冷却水使用量の半減を実現しており、加えて試験装置の冷却水の循環利用(リサイクル)を行うことで、水使用量削減に取り組んでいます。

今後も引き続き、水利用に関する取り組みを行ってまいります。

単年度目標と実績

2025年度より、2027年度を目標年度とするグループ中期目標を設定しました。取水量売上高原単位を、2023年度比で5.72%削減することを目標として活動してまいります。
2025年度の取水量は51.1万㎥となり、前年度より減少しました。工場設備で使用している水の循環利用に取り組み、2025年度の売上高原単位目標の1.79に対し1.66となり、目標を達成しました。

近年の気候変動による集中豪雨などにより、雨水が工場内へ浸入するリスクが高まる傾向にあります。当社グループでは、事業活動のなかで油性、水溶性の切削液などを使用しており、工場内に浸入する雨水により油分や化学物質が河川へ流出するリスクを認識しています。河川への流出防止のため、油水分離槽の整備や油回収装置の設置などの設備投資を進めています。

2025年度は、4,610万円の費用を投じて、雨水排水能力の強化や建屋の防水対策などを実施しました。

水利用活動目標と2025年度実績

項目 活動目標 2025年度実績(単位:㎥/百万円) 評価
目標
(単位:㎥/百万円)
目標年
グローバル取水量
(売上高原単位)
1.79以下 2025年 1.66 達成
1.74以下 2025~2027年 (中期目標) 達成

グローバル取水量

グラフ

グローバル排水量

グラフ

水リスクへの対応

当社グループでは、毎年、「WORLD RESOURCES INSTITUTE」から提供されている「AQUEDUCT」および各地域の自治体から公表されている「水ビジョン」により主な事業拠点の水リスク評価を行っています。2025年度の評価では、中国8拠点、タイ2拠点、ギリシャ1拠点が高リスク地域に位置していると判定されましたが、当該拠点では地下水や河川等からの取水を行わず、上水道や工業用水からの取水量も少ないため、当社への影響は限定的です。今後、継続的にESH監査、法規制モニタリング活動を通じてリスクをコントロールしていきます。

また、サプライチェーンを通じた水リスクへの対応をさらに促進するため、国内外の一次サプライヤーの水利用(取水量、排水量、水質など)に関する調査や、「AQUEDUCT」を用いた水リスク評価を実施しています。サプライヤー毎に分析・評価し、その結果を文書でフィードバックしており、特定のサプライヤーへの直接訪問やWEB会議でヒアリングを実施しています。サプライヤーとのコミュニケーションを深め、環境マネジメントに関する知識の共有や環境スチュワードシップの向上をサポートしています。

地下水利用に関するリスク評価

当社グループは、現在事業活動において大量の水や所定の水質を確保した水を必要としていませんが、一部の事業所で敷地内の井戸から地下水を汲み上げて利用しています。そのため、2020年度に、地下水の利用に伴う地域の水資源へ与える影響を調査しました。まず、地下からの取水量の多い岐阜地区について調査を行い、同地区にある垂井工場(油圧機器事業)・岐阜工場(航空機器事業)の両工場は垂井町の地下水資源に大きな負荷をかけていないことがわかりました。

図

今後も、貴重な環境を⻑きにわたり保つため、影響を与えないようにモニタリングをしながら地下水を利用していきます。

岐阜県の地下水に詳しい有識者からのコメント

垂井町は湧水とそこに生息するハリヨが見られるなど豊かな地下水環境に恵まれており、また濃尾平野にとっても重要な涵養域である。垂井町の地下水を利用するナブテスコが、自社の事業活動が下流域に与える影響を憂慮し、地域の地表水−地下水循環を定量的に評価したことは、非常に意義のある取組みである。地下水の恩恵を将来にあたり享受できるよう、この評価結果に基づいて、今後は地域とともに地下水環境の保全を推進していくことをナブテスコに期待したい。

岐阜大学
工学部 社会基盤工学科 教授
神谷浩二先生

垂井地区以外にも、地域社会との調和を図るため、環境・水関連の地域協議会等へ積極的に参画し、水保全活動や情報交換を行っています。

団体名 地域
ひょうご環境保全連絡会 神戸
神戸地区環境保全連絡協議会 神戸
東播地域地下水利用対策協議会 神戸
岐阜県環境推進協会 岐阜
西濃地区地下水利用対策協議会 岐阜

生物多様性の保全

当社グループでは、グループの事業活動が生物多様性に及ぼす影響について外部のツールである「SBTN SectoralMateriality Tool※1」を活用し、評価を実施しました。まず、当社事業が関連するセクターの影響度を把握するためスクリーニングを行いました。ツール上で示される各圧力カテゴリーでミドル評価以上を「重大な圧力カテゴリー」と定義して分析した結果、当社グループの全事業が詳細評価の対象となりました。
同時に、当社事業の自然資本への依存と影響の両面を評価するため、「ENCORE※2」を用いて評価を行いました。主な事業における依存と影響評価の結果は以下の通りとなります。

  • ※1Science Based Targets Network(SBTN)による生物多様性への影響評価ツール。選択した事業活動(セクター)と各圧力カテゴリーの関連性(マテリアリティ)を6段階で評価することが可能。
  • ※2国連環境計画世界自然保全モニタリングセンター(UNEP-WCSC)や自然資本金融同盟(NCFA)などによる評価ツール。事業プロセスごとの依存と影響を把握するために使用可能。

主な事業における依存と影響評価(ENCORE)(VL~VAの5段階、M以上を抜出)

事業内容 依存 影響
廃棄物浄化 土壌および堆積物の保持 水質浄化、水流調整 水供給 暴風雨緩和、洪水対策 降雨パターン調整 騒音、光 GHG排出量 大気汚染物質の排出量 土壌・水質汚染物質の排出 廃棄物、海底利用面積 水使用量
産業用ロボット部品、各種総合包装システムの製造 M M M M M M M
航空機部品、舶用制御装置、包装検査機器の製造 M M M M M H M M
自動扉装置の製造 M M M M M M H
自動車用ブレーキ装置の製造 M M M M M
鉄道車両用ブレーキ装置の製造 M M H M
各種自動ドアの販売、施工 M M M VH M M M M

上記評価結果を受けて、主な事業における依存と影響評価に対する検証結果は以下の通りとなります。

依存と影響の検証結果に対するリスクの評価と対応については以下の通りとなります。

主な事業における依存と影響評価に対する検証結果

依存
/
影響
優先度の
高い項目
事業活動における自然資本に対する
依存/影響度の検証結果
リスク 対応
依存 水資源の供給や浄化、水流の調整 水資源への依存度は大きくはありませんが、多くのの事業活動が関わっています。他の事業と比較して水資源への依存度が高い事業はありません。一部、印刷業では依存度が高いと評価されましたが、当社の印刷業では水を使用しないため、依存しません。しかし、多くの事業活動が中程度以下ではありますが依存しているため、グループ全体で水資源管理に取り組む必要があると評価しました。 気候変動の進行により、空調機器の冷却や融雪のため、生産拠点によっては取水量が増加するリスクがあります。これらの生産拠点が所在する地域における取水に関するリスクは現状では低く、現時点での当社への影響は限定的であると考えています。
  • ・事業所毎の定期的なモニタリング
  • ・節水活動、節水機器・設備の導入
  • ・高効率空調設備の導入による空調機冷却水使用量の削減
  • ・試験装置の冷却水の循環利用による水資源への依存度低減
洪水や暴風の緩和 洪水や暴風の緩和への依存度は大きくはありませんが、多くのの事業活動が関わっています。他の事業と比較して水資源への依存度が高い事業はありません。しかし、多くの事業活動が中程度以下ではありますが依存がしているため、グループ全体で洪水や暴風の緩和に取り組む必要があると評価しました。 気候変動の進行により、洪水や暴風雨などの自然災害の頻度が増加するリスクがあります。当社では、これらのリスク評価および対応策を実施・開示しています。(TCFD提言に沿った気候変動関連情報にて開示済)
降雨パターン調整 各種自動ドア等の施工を行う事業で非常に高いと評価されましたが、当事業は建築物が建築された後に施工するものであり、降雨パターン調整には大きく依存しません。
影響 騒音、光 騒音・光の影響度は大きくはありませんが、多くのの事業活動が関わっています。他の事業と比較して影響度が高い事業として、鉄道車両用ブレーキ装置の製造事業が高いと評価されましたが、該当事業では屋外での生産活動、特殊な騒音発生源となる設備や過剰な人工光源となる照明設備等は使用しておらず、定期的にモニタリングも行っており影響は限定的であると考えています。
大気汚染物質の排出量 他の事業と比較して影響度が高い事業として、航空機部品、舶用制御装置、包装検査機器の製造事業が高いと評価されました。該当事業の一部工場で、重油を燃料として使用していますが、法規制値の1%未満のNOX排出量であり、影響は限定的であると考えています。 排気・排水設備の故障や気候変動に伴う集中豪雨による工場内に浸入する雨水で、大気汚染物質・土壌・水質汚染物質が工場外へ流出するリスクがあります。
  • ・事業所毎の定期的なモニタリング
  • ・公共水域への排水拠点の自主検査および外部業者による定期的な検査の実施
  • ・油水分離槽の整備や油回収装置の設置
  • ・化学物質使用量の削減、代替の推進
土壌・水質汚染物質の排出 土壌・水質汚染物質の排出の影響度は大きくはありませんが、多くの事業活動が関わっています。他の事業と比較して影響度が高い事業として、建物及び一般産業用自動扉装置の製造事業が高いと評価されました。該当事業では化学物質を使用していますが、接着剤等に含まれるもので微量であり、影響は限定的であると考えています。しかし、多くの事業活動で化学物質を使用しているため、グループ全体で化学物質・排水水質の管理に取り組む必要があると評価しました。

また、サプライチェーンを通じた影響についても同様に評価を実施しています。年間調達金額が調達総額の1%以上を占める主なサプライヤーと、当社の主要7事業のそれぞれ売上高上位の顧客についても上記の当社事業の評価と同様の評価を実施しました。その結果は以下の通りとなります。(High以上)

依存 影響
土砂 水質 降雨 騒音 大気汚染 土壌・水質汚染 外来種の侵入
上流(一部のサプライヤー) H VH H H H -
下流(一部の顧客) H VH VH H H VH

これらにつきましても、当社の上流・下流を含めたサプライチェーン全体での対応を進めていくことでリスクの低減を行って参ります。

加えて、並行して生物多様性評価ツールである「IBAT※3」を用いた評価も行っております。自社拠点から半径50km圏内を調査対象として、IUCN(国際自然保護連合)レッドリストの絶滅危惧種が生息するエリアとKBA※4との近接状況を把握しています。主な生産拠点のある日本で、絶滅危惧種CR(深刻な危機)が75種、EN(危機)が666種、VU(危急)が538種存在することを確認しました。その他地域では、CR(深刻な危機)が71種、EN(危機)が342種、VU(危急)が529種存在することを確認しました。KBA数は、日本57か所、その他の地域で56か所あることを確認いたしました。

今後も、影響評価手法の高度化を図りながら、生物多様性の保全に取り組んでまいります。

  • ※3IBAT Integrated Biodiversity Assessment Tool 生物多様性評価ツール
  • ※4Key Biodiversity Area 生物多様性の重要な地域