価値創造ストーリーと経営マテリアリティ

価値創造ストーリー

当社グループは、「独創的なモーションコントロール技術で、移動・生活空間に安全・安心・快適を提供」することを企業理念とし、その実現に向け、企業理念を体現する姿勢やマインドを「私たちが大切にすること」として明文化した「ナブテスコ ウェイ 」 を掲げ、2030年のありたい姿である「長期ビジョン 」 、長期ビジョン実現に向け取り組むべき課題を示す「経営マテリアリティ」、その実行策である「中期経営計画 」 からなる長期的な価値創造ストーリーを推進しています。これにより、イノベーションを創出し、長期的に経済価値、環境価値・社会価値を向上させることで、社会と当社グループ双方の持続的成長を目指す経営を追求しています。

ナブテスコの価値創造ストーリー

ナブテスコの価値創造ストーリー

経営マテリアリティ

経営マテリアリティに関する考え方

当社グループでは、「経営マテリアリティ」を経営の最重要課題と位置づけ、長期的に経済価値、環境価値・社会価値を向上させることで、社会と当社グループ双方の持続的成長を目指す経営を追求しています。

長期的な価値創造の推進には、事業環境や経営環境の変化に柔軟に対応し、経営マテリアリティを“動的”に変化させることが重要と捉えており、経営マテリアリティを定期的に見直し、柔軟な対応を行っていくこととしています。経営マテリアリティの各項目にかかるアクションを着実に積み重ねていくことで、経営基盤を一層強化していきます。

経営マテリアリティ

経営マテリアリティの構造

経営マテリアリティは3つの柱から成り立ち、財務・非財務両面での取り組みを進めることで、「利益ある成長」を継続しながらステークホルダーへの価値を持続的に創造してまいります。

「財務パフォーマンス向上への取り組み」では、短期的な収益目標の遂行を積み重ねながら、経営資源の効率的な配分と資産効率の向上を追求し、ROIC経営の浸透を図ります。また、「経営基盤強化への取り組み」の各項目のうち、将来的に財務への影響が大きいとみなされる項目を「財務インパクトの大きいESG項目」として抽出し、ESG項目と財務との結合性を意識し重点的な取り組みを推進します。同時に、「サステナビリティパワーの源泉となるESG項目」を持続的な価値創造能力の土台となる要素として認識し、これらの取り組みにより事業継続におけるリスクの低減を図ります。

さらに、「長期ビジョン実現への固有の取り組み」により、競争力を強化し長期的な成長率を高めるとともに、「財務パフォーマンス向上への取り組み」「経営基盤強化への取り組み」により資本コストの低下を図ります。

経営マテリアリティの構造

サステナビリティ・ガバナンス体制

当社グループは、サステナビリティ・ガバナンスを強化するべく、2023年に従来のCSR委員会を発展的に解消し、CEO直轄の「経営マテリアリティ委員会」を設置しました。同委員会の委員長および委員は取締役を含む執行役員および関連部門の責任者から任命し、年2回以上開催しています。

同委員会は、経営マテリアリティの進捗管理を統括し、他のCEO直轄委員会である「品質・PL委員会」「ESH委員会」「リスクマネジメント委員会」「情報セキュリティ委員会」と連携し、経営マテリアリティの各項目に関する目標やKPIを決定するとともに定期的な評価を行います。その活動内容は経営会議(マネジメントコミッティ)での審議・決定を経て、取締役会に報告されます。

また、同委員会は、定期的にマテリアリティ自体の見直しを行い、取締役会に報告します。見直し結果を取締役会にて審議の上、決議する仕組みとすることで、グループ全体でのサステナビリティ・ガバナンスの実効性向上を図っています。

サステナビリティ・ガバナンスの推進体制(2024年1月1日現在)

サステナビリティ・ガバナンスの推進体制(2024年1月1日現在)

経営マテリアリティの特定プロセスと定期的な見直し

当社グループでは、経営マテリアリティの特定プロセスに関して内部での議論を深めるとともに、複数の長期投資家・ESG投資家との対話を実施し、その結果得られた示唆を踏まえ、以下の3点を重視しながら経営マテリアリティ特定を進めました。

  1. 1.自社の存在意義、企業理念、長期ビジョンとの結びつき
  2. 2.自社の差別化につながる固有性を有すること
  3. 3.財務的な企業価値向上のみならず社会課題の解決を両立すること

2021年に実施した経営マテリアリティ特定にあたっては、長期ビジョン策定プロセスで検討した「将来の外部環境見通し」「価値創造を支える経営資源」を踏まえ、全社横断的な戦略の推進を担うコーポレート部門の短期・中長期的な問題意識を分析フレームワークより抽出し項目化しました。併せて、当社ビジネスに関連性の高いESGテーマをESG評価機関の評価項目、非財務情報開示フレームワーク・スタンダード等より選出し、社内外の視点を合わせてリスト化したテーマを「重要性」「時間軸」「財務へのインパクト」の観点で整理しました。さらに、各事業に固有の長期的な機会・リスクへの重点テーマをビジネスモデルの持続性およびESGの側面から分析し、最終的に、これらをキーワードとして整理しました。

特定プロセス

特定プロセス

参照した非財務情報開示基準等

  • 国際統合報告評議会(IIRC):「国際統合報告フレームワーク」
  • Sustainability Accounting Standards Board(SASB): SASBスタンダード
  • Global Reporting Initiative(GRI): GRIスタンダード
  • ISO26000(組織の社会的責任に関するガイドライン)
  • 経済産業省:価値協創のための統合的開示・対話ガイダンス

特定した経営マテリアリティは、事業環境や経営環境の変化に柔軟に対応するために、毎年、定期的に見直しを行っていくこととしています。

2022年には価値創造の起点となる資本として人的資本を捉え直し、統合的な対応を行っていくことを目的に人財関係の項目を「人的資本経営の推進」に改定したほか、各項目のアクションの見直しを実施しました。この見直しは、CSR委員会での審議を経て、経営会議(マネジメントコミッティ)で承認された後、取締役会にも報告されています。また、2023年には、「経営マテリアリティ委員会」にて進捗レビューとアクションプラン設定を行いました。なお、レビューの結果、当該年度での経営マテリアリティの変更は不要と判断し、同じくマネジメントコミッティおよび取締役会での審議を経て、取締役会で決定いたしました。

経営マテリアリティの指標及び目標

経営マテリアリティの「経営基盤強化」の各課題における目標と指標、主な活動実績・計画は以下のとおりです。

サステナビリティに関する目標と指標、主な活動実績・計画

経営基盤強化の取り組み
大項目 ESG
分野
経営マテリアリティ項目 目指す方向/
主要アクション
2023年活動目標
(抜粋)
2023年活動実績
(抜粋)
2024年
重点活動計画
財務インパクトの大きい
E
S
G
項目
環境(E) 気候変動への対応
  • CO₂削減 中長期目標の達成
  • TCFD情報開示の充実(シナリオ分析充実)
  • 中長期目標に沿ったCO₂削減(2015年比14%削減)
  • TCFDに沿った情報開示の充実(財務インパクトの開示)
  • 中長期目標に沿ったCO₂削減(2015年比20.8%削減)
  • 海外拠点での環境価値証書の調達実施
  • 中長期目標に沿ったCO₂削減(2015年比25%削減)
  • 環境配慮型最新工場の立上げ(浜松・垂井工場)
社会(S) 事業を通じた社会課題の解決
  • 環境・安全に配慮した設計開発の推進
  • 社会課題解決に貢献する新事業・新製品の創出
  • 社内アイデア事業化制度、カンパニーイノベーション支援制度の推進
  • イノベーション戦略室の新設
  • 事業化アイデア選定、ベンチャーユニットを立上げ
  • Deep Sea Technologies社を買収
  • 脱炭素化に向けボーイング社との協業に合意
  • 社内アイデア事業化制度(第2期)の推進、カンパニーイノベーション支援制度の推進
  • ベンチャーユニット事業化の推進
  • 社会課題解決に貢献する新事業・新製品の創出
強靭なサプライチェーンの構築
  • サプライヤーの供給リスクへの対応
  • サプライヤーのESG課題解決に貢献
  • サプライヤーのBCP支援
  • サステナビリティ監査の拡大
  • サステナビリティ啓蒙活動の推進
  • レジリエンス認証取得支援
  • サプライヤーのESGリスク抽出、改善策の提案、是正措置の推進に向け、累計84社へのサステナビリティ監査を実施
  • 累計44社へのレジリエンス認証取得支援を実施
  • サステナビリティ監査の拡大
  • サステナビリティ啓蒙活動の推進
  • レジリエンス認証取得支援
ガバナンス(G) 経営会議体の実効性向上
  • 多様性を基盤とする経営体制構築
  • 取締役会での中長期戦略に関わる議論の強化
  • 取締役会の運営効率の向上
  • 重要課題への審議を拡充(グローバル戦略、人財戦略、サステナビリティガバナンス等)
  • 執行側への権限委譲を進め、重要課題の審議を拡充(グローバル戦略、事業ポートフォリオ、人財戦略、気候変動戦略等)
  • CEO直轄委員会を見直し、経営マテリアリティ委員会・情報セキュリティ委員会を設置
  • 取締役会の運営効率の向上
  • 重要課題への審議を拡充(グローバル戦略、技術戦略等)
サステナビリテ
ィパワーの源泉となる
E
S
G
項目
環境(E) 環境マネジメントの推進
  • 原材料の効率的な使用・廃棄物の削減
  • 生物多様性の保全
  • 環境理念・環境行動指針の社内浸透
  • 廃棄物管理/水資源・生物多様性の保全
  • 新環境理念・環境行動指針を国内外グループへ周知
  • 生物多様性に関する影響調査を実施
  • 廃棄物・水資源・化学物質管理:売上高原単位で前年以下
  • 生物多様性に関する影響調査をバリューチェーンに拡大
社会(S) 安全・安心・快適の追求
  • 品質・安全管理の高度化
  • 製品安全に関する目標
    • -製品安全性審査の実施計画達成率100%
    • -製品安全に関する社員教育の計画達成率100%
  • 製品安全に関する目標
    • -製品安全性審査の実施計画達成率:実績100%
    • -製品安全に関する社員教育の計画達成率:実績100%
  • 製品安全に関する目標の遂行
  • 機能安全の対応推進
  • 安全文化醸成活動の推進
  • 安全モデル職場改善活動実施(国内9拠点、海外5拠点)
  • 不安全行動抑止の習慣(安全禁則周知 他)
  • 全社統一安全基準の設定・展開
  • 安全モデル職場改善活動実施(国内8拠点、海外5拠点)
人的資本経営の推進
  • 事業起点の人財マネジメントへの移行
  • ダイバーシティ&インクルージョン推進/人権マネジメントの高度化
  • 社員エンゲージメントの向上
  • 人事制度改革プロジェクトの推進
  • 人的資本経営に関する開示充実
  • ナブテスコ ウェイの改定
  • 健康経営の高度化
  • 管理職人事制度の改定
  • 多様な採用手法確立・人財流動化施策の実行
  • 人的資本経営ストーリー開示、KPI・実行戦略の策定
  • ナブテスコ ウェイの改定
  • 健康経営優良法人の認定取得
  • 1on1の部分的導入
  • 一般職人事制度の改定、管理職人事制度の運用・定着
  • 施策の実行、KPI・指標のモニタリング、人的資本開示の強化
  • ナブテスコ ウェイ浸透活動の実行
  • 健康経営の重点テーマ設定・実行
  • 1on1の全社展開、タレントマネジメントシステム運用
地域社会とのエンゲージメント
  • 企業市民活動の推進
  • 環境・教育・福祉領域での企業市民活動の実施
  • 環境・教育・福祉領域での企業市民活動の実施
  • 環境・教育・福祉領域での企業市民活動の実施
ガバナンス(G) 経営の透明性確保
  • コーポレートガバナンスの強化
  • リスク管理とコンプライアンスの徹底
  • ステークホルダーとの積極的な対話
  • 独禁法コンプライアンス・腐敗防止対応のグローバル展開
  • IR DAYの開催
  • 責任権限規定体系の現状評価を実施
  • 改定ナブテスコグループ倫理規範全世界周知活動、ハイリスク地域における腐敗防止活動実施
  • 経営マテリアリティの見直しを実施
  • 意思決定スピードアップに向けた責任権限規定体系の見直し
  • 欧州独禁法遵守教育実施、欧州公益通報者保護指令対応
  • 非財務情報開示の充実