SCROLL
片山真理×ミツ精機
製造者を
たずねる
緻密な制御で片山の生活を支える『ALLUX2』。
その製造を担っているのが、
淡路島にあるミツ精機株式会社。
その製造現場を訪ね、職人たちと対話をすることで、
ものづくりのプロたちの情熱と
こだわりに共鳴していく。
1000分の1mmの世界
「この音が好きですね。懐かしい、ものづくりの音ですよね」。ミツ精機の工場内に入ると、町工場がたくさんある故郷を思い出し、片山は懐かしさを感じたという。その音の先に歩を進めると、銀色に輝く立方体の金属が一定の間隔でキレイに並べられていた。
「ここの金属の塊を加工して、『ALLUX2』の部品を作っているんです。中には100〜1000分の1mmの精度で加工している製品もあります。義足を利用されている皆さんは、本当にわずかな部品同士の接触も感じ取られます。だからこそ、部品の段階から高精度の物を作る必要があるんです」。工場を案内してくださった三津千久磨社長は、一つひとつの工程を説明しながら、その圧倒的に小さなスケール感についても話してくれた。
ヒューマンエラー0を
目指す、
飽くなき挑戦
工場内を歩いていくと、何度も目に飛び込んでくる言葉がある。それは、“品質”と“納期”だ。工場1階の中央には、この2つの言葉を徹底するための月間目標や宣言が掲出されている。「最新の機器を導入していますが、やはり職人の力が必要な工程も多くあります。人間なので絶対にミスをしないということはありません。それでも、私たちはヒューマンエラーを0にしていくための宣言と活動を続けています」。品質と納期に対する妥協なき姿勢と、飽くなき挑戦を三津社長は語る。
改めて、従業員の皆さんの仕事ぶりを見ると、仲間との引き継ぎを確実に行い、ヒューマンエラーをなくすためのチェック作業が入念に行われていた。
「役割分担と引き継ぎを徹底して、まるで大事なバトンを渡していくように仕事をされていて、皆さんのチームワークの良さを実感しました。私もチームで仕事をすることが多いので、とても共感できます。素晴らしい信頼関係の中で自分の義足が作られていることが分かると、より一層安心して利用できますね」。実際に自身の義足が作られている工程と、そこで働く人たちの責任感とチームワークを目にすることで、『ALLUX2』に対する想いにもポジティブな変化が生まれたと片山は語る。
感覚だけでなく、 頭でも『ALLUX2』を理解
最後に訪れたのは、組立工程。案内してくれたのは、ミツ精機社内の厳しい基準をクリアして認定を受けた組立のエキスパート辰己亮平さん。その場で実際に組立作業を行いながら、『ALLUX2』の内部構造を説明してくれた。角度センサーや荷重センサーなどの構造から防水の仕組みまで、片山からの多くの質問に対して、辰己さんは一つひとつ丁寧に回答。質問攻めにあっても、楽しそうに答えているのが印象的だった。「自分の仕事にこんなにも興味を持っていただけるのは嬉しいです。実際に利用者の方とお話しする機会もなかなかないので、勉強になります」と辰己さんは笑顔で話してくれた。
また、組立作業の中で気になったのは、「カチッ」という音と、マジックペンで付けられていくマーカーだ。「ボルトやネジの締め付けには、一定の力がかかるとカチッと音がするトルクレンチを使っています。組立は認定を受けた人間しか作業できませんが、そのメンバーの中でも力の加減に誤差が出てはいけないので。そして、チーム内で組立作業の引き継ぎを行うこともありますが、絶対に作業漏れがあってはいけないので、必ずマーカーで作業完了の印を付けています」。辰己さんの言葉の中にも、ヒューマンエラー0への信念と利用者に対する強い責任が感じられた。
「こうやって、実際に組み立てられていくところを目の前で見て、構造や仕組みをインプットすることで、利用している時の感覚だけでなく、頭でも『ALLUX2』を理解できました。今後、長く上手に付き合っていく上で、とても貴重な経験になりました」と片山は辰己さんとの対話を振り返る。
『ALLUX2』は、
笑顔で楽しく作られている
「工場を見学させていただき、まず素晴らしいと感じたのは、従業員の皆さん一人ひとりが自分の仕事と役割に強い責任感を持って働かれている点です。私も限りある時間の中で、責任を持って仕事に取り組み、作品のクオリティを高めてきたので、ミツ精機さんの“品質”と“納期”という言葉には感銘を受けました。そして、皆さん、自分の仕事が本当に大好きで、誇りを持ちながらも楽しそうに働かれていたことも印象的でした。
近年、製造現場では機械化や自動化がどんどん進んでいるかと思いますが、私は人の温もりや想いが感じられる物の方がやっぱり好きです。自分が毎日履いている義足が、笑顔で楽しく作られていることを知れて、私自身もすごく嬉しい気持ちになりました。そして、『ALLUX2』への愛着もさらに強くなったと感じています」。遠く淡路島の地まで足を運ぶことで『ALLUX2』との距離がグッと縮まったと、片山はミツ精機への訪問を振り返った。