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片山真理×義肢装具士
義肢装具士が
たずねる
片山と『ALLUX2』を巡り合わせた
ナブテスコの義肢装具士 藤原健司。
今回は、藤原が片山のアトリエを訪ね、
普段はあまり話すことのないお互いの仕事に対する
信念や想いについて、肩を並べて語り合った。
VISITOR
ナブテスコ株式会社
住環境カンパニー
福祉事業推進部 営業課
義肢装具士
藤原 健司
からだを預ける物
だからこそ、即決させない
片山:『ALLUX2』を最初に履いた時、それまでの義足と全然違って「こんなに楽なんだ!」と感激したことを今でも覚えています。正直、電子制御という点にかなり懐疑的なイメージを持っていたのですが、一歩目からスムーズに歩けて180°印象が変わりましたね。「いいところしかないじゃん」とすぐに思いました。でも、それと同じくらいに印象的だったのが、藤原さんに「でも、相性が一番大事ですよ。他社の製品も試してから決めた方がいいですよ」と言われたことです。全然、自分の会社の商品を売る気がないと思ってビックリしました(笑)。
藤原:試着には勢いがあるんですよ。新鮮さや驚きがあるので、感激して即決したくなるんです。でも、長い時間歩くと、意外としっくりこないってことも多いんです。だから、試着の第一印象はあんまり信じないようにしていますし、お互いに一呼吸置くことを大切にしています。義足は長く付き合っていく物でもあるし、からだと生活を預けるものでもあるので、じっくり考えて選んだ方がいいんです。ユーザーの方が選ぶプロセスも大事にしたいと思っています。
片山:藤原さんに『ALLUX2』を強くプッシュされなかったことで、逆にこの人は信用できる人だなと思いました。その後も、何度も話をしていてもウソが全くない人だなと思いましたし、何より藤原さんは話していることがすごく分かりやすいし、伝わりやすいんです。ユーザーの方と話す時に、何か意識していることってあるんですか?
藤原:やっぱり、一人ひとり表現方法が違うんですよ。強い、弱い、重い、軽い……同じ現象に対しても感想の伝え方は人それぞれです。だからこそ、相手がどういう言葉を使っているのかを意識して、それに合わせて会話をするようにはしていますね。片山さんは、好みや表現がはっきりしていて、すごく分かりやすかったです。
片山:性格ですかね(笑)。逆に、『ALLUX2』と藤原さんに出会って義足に対する興味が湧いて、そこから初めて義足の勉強をしました。
藤原:実は、片山さんに『ALLUX2』の説明をそんなにしてないんですよ。すごく勉強されていて、あまり説明する必要がなかったです。勉強以外でも、坂道を歩くことやハイヒールで歩くことって簡単なことではないんですが、片山さんはいつも前向きに挑戦されていてすごいなと思っています。
ハイヒールでキレイに歩く
姿は、目標であり、希望
片山:ハイヒール・プロジェクトの話を聞いた時は、率直にどういう印象を持ちましたか?
藤原:義足ユーザーの選択肢を増やすという考えや片山さんの挑戦する姿勢に、私はもちろん、会社のメンバーもとても共感しました。なぜなら、初めて義足を履く方々の多くは、まず目標の設定に悩まれるからです。「他の人は、どこまで歩けるの?」「どこまでのことができるの?」「どんな仕事ができるの?」という質問をよくされます。私もいろいろと社会で活躍されている義足ユーザーのお話をしますが、足がある私が伝えられることには限界があるんです。だからこそ、ハイヒールを履いて、誰よりもキレイに歩く片山さんの姿を見てもらうことは、多くの義足ユーザーの目標や希望になると思いました。そうすると、歩くことに対するモチベーションも上がり、みんな前向きになれますよね。
片山:障がい者は慎ましやかに生きていかないといけないという雰囲気が、特に昔はあったと思うんです。奉仕されている側というか。障がい者の方々も自分自身で「あれはできない」「これはやってはいけない」と思ってしまうことがあると思いますし、実際は私もできないことや諦めることにたくさん直面してきました。
だからこそ、私のような表現や発信を活動にしている人間を通じて、義足ユーザーの皆さんにも、いろいろな選択肢や可能性があることを感じていただきたいんです。もちろん、義足ユーザーの皆さん全員にハイヒールを履いてほしいわけではないんです。「履かなくてもいいや」の裏側にある「私は履けないから」の理由を無くしたいんですよね。
藤原:やっぱり、片山さんはパワーがありますよね。これからも、どんな活躍をされていくのか楽しみにしています。また、今回築けたナブテスコとのパートナーシップを、今後も大切にしていきたいと思っています。
片山:はい、データ提供など、私にできることがあれば、どんどん協力したいと思っています。また、開発のディスカッションなどにも、ぜひ参加させていただきたいです。甲南工場の個性豊かな開発チームの皆さんと一緒にものづくりをするのって、すごく楽しそうです。