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アート制作の現場
ともに
つくる
素敵な出会いは、時として新たなアイデアや
ヒントを与えてくれる。
片山真理が、ナブテスコとの協賛契約を結んで2年。
『ALLUX2』のものづくりの現場と
設計者や製造者、義肢装具士をたずねて
対話を重ねてきた。
そんな出会いをきっかけに、
彼女のナブテスコとの共創への意欲と構想は
2つの作品へと昇華されていく。
真っ赤なハイヒールと
ともに歩む
新たな共創
ナブテスコから『ALLUX2』が提供され、片山のハイヒール作りのパートナーであるイタリアのシューズブランド セルジオ ロッシによって、真っ赤なハイヒール『Mari K』が完成した。童話『赤い靴』の踊り続ける足と赤い靴に象徴されるように、片山が赤いハイヒールに込めた想いは、自らの願いと意志を貫く力強さ。この『Mari K』の魅力を、片山はナブテスコとの共創へとつなげていく。
自動ドアとアートの融合
一つ目は、ナブテスコの本社オフィスの自動ドアを彩る『my legs #2024』。透明なガラスのドアに、写真を印刷した特注フィルムをベースにクリスタルガラスとペイントで描かれたのは、『ALLUX2』と『Mari K』を履いた片山と、生い茂るローズマリーの木々。片山は、自宅で育てたローズマリーが地に根を張り、ぐんぐんと太陽へ枝を伸ばす姿を見て、その生命のたくましさと自身の歩み、ハイヒール・プロジェクトの広がりを重ね合わせた。
「自動ドアという開閉と重なりが生まれる工業製品とアートを融合させる点が非常に難しく、同時に最後までこだわり抜いたポイントでもあります」。
何度も調整を重ね、透明度を高めたフィルムで彩られたアートは、万華鏡のようにわずかな光の加減や角度で見え方が変化していく。ドアの動きや日差しの移り変わりとともに多彩な表情を魅せる世界に一つだけの作品が完成した。
自らの願いと意志を貫くローズマリーと
『ALLUX2』と『Mari K』。『my legs #2024』に込めた「自分が信じてやり続けたいと思うことがあれば、周囲の雑音を気にせず、自分が認めてあげればいい」という想いは、社員の背中を押し、新たな挑戦の扉を開く象徴として、オフィスに刺激と力強さも与えている。
Photos by Hayato Wakabayashi
チームでつくる
素晴らしさを、
ナブテスコから教わった
2つ目の作品は、映像作品『my way』。「絶対にまたここに来たいと思っていました」と片山が撮影場所に選んだのは、昨年ナブテスコの社員と対談をした『ALLUX2』を開発・設計しているナブテスコ甲南工場だった。
深夜の工場内を、『ALLUX2』と『Mari K』で、華麗に、そして力強く歩み、突き進んでいく片山の姿が映し出されている。「どこから始まって、どこに帰っていくのか、目的は何なのか、少し謎めいた部分を残しているので、映像をご覧いただく方々に自分を重ねてみていただきたいです」と、片山は作品に込めた想いを語る。
「説明的で感動的な映像には絶対にしたくなかったんです。障がい者が義足で歩いているだけで感動される人も多いのですが、それを超越するような魅力を持った映像にしたかったんです」。義足で歩くことへの社会の印象を覆すほどのアートを。片山は並々ならぬ決意で、『my way』の制作に臨んだ。
今回、片山にとっても大きなチャレンジとなったのは、チームで作品を作っていくことだ。これまで、片山は自らの手で作品をつくり、写真を撮り、アートを仕上げていくことがほとんどであったが、今回は撮影チームで作品づくりに挑んだ。
誰かに任せることへの不安を抱きながらも、片山を前進させたのは、以前対談をした『ALLUX2』の開発メンバーのチームワークだった。「ナブテスコの皆さんは、それぞれ得意分野があり、仲間を信頼して任せることで最高のものづくりをされていました。そんな働き方を知って、自分もチームでも制作に挑戦してみようと思ったんです」。直前までの不安が嘘のように、深夜の撮影は順調に進み、期待以上の作品ができ上がった。
そして、『my way』はアート映像としては珍しく、縦型で撮影と編集が行われている。「横型だと、どうしても第三者の目線になってしまうような気がしました。今回の映像では、見ている方が自分ゴトにできるような作品にしたかったんです。それが作品自体の求心力につながるとも思いました。撮影陣からは、最初はめちゃくちゃ反対されましたけど(笑)」。対話を重ね、自分の想いを伝え、仲間を信頼し、『my way』はこれまでにない新たな魅力を持った映像作品へと仕上がっていった。
「ナブテスコさんが携わった大阪駅うめきた地下口のサイネージとホームドアを見て、新たなアートが生み出せるようなインスピレーションを得ることができました」と話す片山は、すでに新たな作品づくりへの第一歩を自身の中で歩み出しているようだ。ナブテスコとの出会いと挑戦を重ねることで、彼女の創造力は、これからも無限に広がっていくのだろう。
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