

カーリング男子日本代表
SC軽井沢クラブ特別インタビュー
山口剛史選手(以下、山口)僕はそのもう少し前、世界選手権の公式練習ですね。自分としては5年ぶりの世界選手権だったんですが、世界選手権のアリーナは観客席が暗くて氷上が明るい、特別なステージという感じなんですよね。「ああ、この場所に戻ってきたな」という感慨と共に、シーズンでいちばん楽しい場所ということを再確認できました。
栁澤李空選手(以下、栁澤)カナダ遠征の初戦です。サスカチュワン州のマーテンズビルという街での大会だったんですけれど、カナダに入って3日目くらいにチーム・フラッシュ(Colton Flasch)という、その時、世界ランキングトップ20にいる強いチームと対戦したんです。
やりたいことが何もできずに1点も取れずに0-4で負けてしまって、「遊ばれてるなあ。これからこんな試合ばかり続くんだろうな。でも、楽しいな」とやる気にさせてもらった試合でもありました。初戦でボコボコにされたことでスイッチが入って、次の試合からはしっかり勝って、プレーオフに上がってフラッシュにリベンジもでき、決勝まで進めました。あの試合で心がうごいてくれたから、長いカナダ遠征での課題を日本に持ち帰って、日本選手権に向けてまたいい練習ができた。いいシーズンを過ごせたきっかけだったと思っています。
―「うごかす」という意味では小泉選手や山本選手は競技に集中するために、自らの環境をうごかして軽井沢に集った経緯があります。
2018年に平昌五輪に出場した山口選手は、その後、チームを再編するために選手やポジションを動かし、その結果、スキップに抜擢されたのが当時、20歳の栁澤選手でした。その栁澤選手はゲームをイメージ通りにうごかすために、どんな思いでプレーをしているのでしょうか。それぞれの「うごかす」への意識を語ってもらいました。
―小泉選手にはスイーパーとして、狙ったところにストーンを正確かつ自在に止める技術が求められます。その際に何を注意しているのか。世界選手権に最年少選手として出場したことでも話題となった成長著しいセカンド山本選手には、相手の石をテイクする(うごかす)時に考えていることを。もっともキャリアを持った最年長の山口選手には世界と日本のカーリング界の動きを、そしてその山口選手を巧みにうごかすためにスキップの栁澤選手が念頭に置いていることを、それぞれ教えてもらいました。
山口山本が最年少選手として出場したことも含め、世界選手権に出てくるチームや選手も変わってカーリング界は常にうごいていると感じています。国内を見渡しても、日本代表として平昌五輪で銅メダルを獲得したロコ・ソラーレが次は銀メダルという進化を見せてくれて、その4年の間にもカーリングを取り巻く環境はどんどんうごいています。その動きを止めないように、男子もいい結果で世界に追いつかないといけないですね。
栁澤こんな感じで山口は普段、いちばん燃えているので、燃えてない時は「鎮火してるなあ」とわかりやすいんです。だいたいは想像通りにパフォーマンスできなかった時ですね。スキップとして、気持ち良く投げてほしいので、例えばドローが決まってなかったら「幅を変える? 投げを変える?」くらいの提案でコミュニケーションをとっていれば、そのうち勝手に火が点くので、あんまり難しく考えていません。言い過ぎないように気をつけてるくらいですね。
個人的にはショットが決まらない時、苦しい展開にある時に「不機嫌な自分」に気づくことを意識しています。チームのメンタルコーチともよく話しているのですが、不機嫌になるのは仕方ないので、その状態にあることを早い段階で自覚することを大切にしています。今後もそれはテーマのひとつですね。
山口昨シーズンは約100試合をこなしたのですが、勝率は悪くなかったと思います。ただ、僕らに足りないのはランキング上位チームや各国代表チームなど、強いチームとの試合数です。彼らとの試合は「強いな、これは勝てないな」とこっちが感じてしまうようなすごいショットも出ますし、崖っぷちのような局面に常にさらされるんですけれど、さっき栁澤が言ったようにそれが本当に楽しいですし、そこでしか得られない経験値があるんです。それがもっともっと欲しいですね。
そのためには自分たちも見ている人の心もうごかすようなプレーを続けなくてはいけませんし、ゲームの中で悪い流れになったら止めないといけない。
どちらも難しくエネルギーのいることなんですが、国内トップシェアで世界に挑むナブテスコさんの「うごかす、とめる。」を見習って共に進んでいこうと思っています。みなさん、今季も応援よろしくお願いします。